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名古屋地方裁判所 平成7年(行ウ)35号 判決 1997年1月31日

愛知県安城市安城町宮地一三番地

第三五号事件原告

杉浦博幸

愛知県安城市安城町広美三五番地

第三六号事件原告

杉浦健璽

右両名訴訟代理人弁護士

桜川玄陽

愛知県刈谷市神明町三丁目五〇一番地

被告

刈谷税務署長

川上栄一

右指定代理人

西森政一

同右

太田尚男

同右

戸苅敏

同右

相良修

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は、原告らの負担とする。

事実及び理由

第一請求

一  被告が平成四年三月一〇日付けで原告杉浦博幸に対してした次の各処分を取り消す。

1  昭和六三年分所得税の更正のうち総所得金額七三三万三一五三円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定

2  平成元年分所得税の更正のうち総所得金額一〇〇五万二九九九円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定

3  平成二年分所得税の更正のうち総所得金額九三七万九八六七円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定

二  被告が平成四年三月一〇日付けで原告杉浦健璽に対してした次の各処分を取り消す。

1  昭和六三年分所得税の更正のうち総所得金額三七二万九〇〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定(いずれも異議決定によって一部取り消された後のもの)

2  平成元年分所得税の更正のうち総所得金額五〇九万五二〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定(いずれも異議決定によって一部取り消された後のもの)

3  平成二年分所得税の更正のうち総所得金額五一〇万八五二〇円を超える部分

第二事案の概要

一  争いのない事実

1(一)  原告杉浦博幸(以下「原告博幸」という。)は、平成元年三月一三日、昭和六三年分所得税について、次のような内容の確定申告をした。

(1) 総所得金額 七三三万三一五三円

(2) 算出税額 九二万七〇〇〇円

(3) 源泉徴収税額 二一〇万〇八〇〇円

(4) 還付金の額に相当する税額 一一七万三八〇〇円

(二)  被告は、平成四年三月一〇日付けで、原告博幸の昭和六三年分所得税について、次のような内容の更正をするとともに、税額一三九万八〇〇〇円の過少申告加算税賦課決定をした。

(1) 総所得金額 三〇一六万六六九三円

(2) 算出税額 一〇五六万二〇〇〇円

(3) 源泉徴収税額 二一〇万〇八〇〇円

(4) 納付すべき税額 八四六万一二〇〇円

2(一)  原告博幸は、平成二年三月一二日、平成元年分所得税について、次のような内容の確定申告をした。

(1) 総所得金額 一〇〇五万二九九九円

(2) 算出税額 一七三万五五〇〇円

(3) 源泉徴収税額 二九六万四五〇〇円

(4) 還付金の額に相当する税額 一二二万九〇〇〇円

(二)  被告は、平成四年三月一〇日付けで、原告博幸の平成元年分所得税について、次のような内容の更正をするとともに、税額一四五万二〇〇〇円の過少申告加算税賦課決定をした。

(1) 総所得金額 三三〇五万九四五二円

(2) 算出税額 一一九九万六〇〇〇円

(3) 源泉徴収税額 二九六万四五〇〇円

(4) 納付すべき税額 九〇三万一五〇〇円

3(一)  原告博幸は、平成三年三月一二日、平成二年分所得税について、次のような内容の確定申告をした。

(1) 総所得金額 九三七万九八六七円

(2) 算出税額 一五一万四七〇〇円

(3) 源泉徴収税額 二四八万〇四〇〇円

(4) 還付金の額に相当する税額 九六万五七〇〇円

(二)  被告は、平成四年三月一〇日付けで、原告博幸の平成二年分所得税について、次のような内容の更正をするとともに、税額一四七万九五〇〇円の過少申告加算税賦課決定をした。

(1) 総所得金額 三二九〇万五九四二円

(2) 算出税額 一一八八万七五〇〇円

(3) 源泉徴収税額 二四八万〇四〇〇円

(4) 納付すべき税額 九四〇万七一〇〇円

4  原告博幸は、平成四年四月一六日、右1ないし3の各処分について異議申立てをしたところ、被告は、同年七月九日付けで、右の各異議申立てを棄却する旨の決定をし、原告博幸は、同月三一日、国税不服審判所長に対し、審査請求をしたが、国税不服審判所長は、平成七年六月二三日付けで、右の各審査請求を棄却する旨の裁決をした。

5(一)  原告杉浦健璽(以下「原告健璽」という。)は、平成元年三月一三日、昭和六三年分所得税について、次のような内容の確定申告をした。

(1) 総所得金額 三七二万九〇〇〇円

(2) 算出税額 二六万〇三〇〇円

(3) 源泉徴収税額 五七万六三一〇円

(4) 還付金の額に相当する税額 三一万六〇一〇円

(二)  被告は、平成四年三月一〇日付けで、原告健璽の昭和六三年分所得税について、次のような内容の更正をするとともに、税額八〇〇〇円の過少申告加算税賦課決定をした。

(1) 総所得金額 四三五万五五一〇円

(2) 算出税額 三四万五八〇〇円

(3) 源泉徴収税額 五七万六三一〇円

(4) 還付金の額に相当する税額 二三万〇五一〇円

6(一)  原告健璽は、平成二年三月一二日、平成元年分所得税について、次のような内容の確定申告をした。

(1) 総所得金額 五〇九万五二〇〇円

(2) 算出税額 四八万六〇〇〇円

(3) 源泉徴収税額 九一万四四七〇円

(4) 還付金の額に相当する税額 四二万八四七〇円

(二)  被告は、平成四年三月一〇日付けで、原告健璽の平成元年分所得税について、次のような内容の更正をするとともに、税額九〇〇〇円の過少申告加算税賦課決定をした。

(1) 総所得金額 五五八万一六一三円

(2) 算出税額 五八万三二〇〇円

(3) 源泉徴収税額 九一万四四七〇円

(4) 還付金の額に相当する税額 三三万一二七〇円

7(一)  原告健璽は、平成三年三月一二日、平成二年分所得税について、次のような内容の確定申告をした。

(1) 総所得金額 五一〇万八五二〇円

(2) 算出税額 四七万四六〇〇円

(3) 源泉徴収税額 六七万四七〇〇円

(4) 還付金の額に相当する税額 二〇万〇一〇〇円

(二)  被告は、平成四年三月一〇日付けで、原告健璽の平成二年分所得税について、次のような内容の更正をした。

(1) 総所得金額 五二三万〇〇五七円

(2) 算出税額 四九万八八〇〇円

(3) 源泉徴収税額 六七万四七〇〇円

(4) 還付金の額に相当する税額 一七万五九〇〇円

8  原告健璽は、平成四年四月一六日、右5ないし7の各処分について異議申立てをしたところ、被告は、同年七月九日付けで、右5及び6の各処分を一部取り消す旨の決定及び右7の処分についての異議申立てを棄却する旨の決定をした。一部取消後の右5及び6の各処分の内容は、次のとおりである。

(一) 右5の処分(昭和六三年度)

(1) 総所得金額 四三一万一〇二六円

(2) 還付金の額に相当する税額 二三万九三一〇円

(3) 過少申告加算税額 七〇〇〇円

(二) 右6の処分(平成元年度)

(1) 総所得金額 五四一万一二八七円

(2) 還付金の額に相当する税額 三六万五二七〇円

(3) 過少申告加算税額 六〇〇〇円

9  原告健璽は、平成四年七月三一日、国税不服審判所長に対し、右5ないし7の各処分について審査請求をしたが、国税不服審判所長は、平成七年六月二三日付けで、右の各審査請求を棄却する旨の裁決をした。

二  争点についての当事者の主張

1  被告の主張

(一) 原告博幸について

(1) 原告博幸の賃料収入

ア 別紙物件目録記載(一)の土地に係る賃料収入

<1> 原告博幸は、昭和四八年五月九日、杉浦貞三から、相続を原因として、別紙物件目録記載(一)の土地(以下「下管池の土地」という。)を取得した。

<2> 原告博幸は、昭和五六年一一月一六日、中京佐川急便株式会社(以下「中京佐川急便」という。)との間において、下管池の土地を、賃料月額八三万円、毎月末日までに翌月分を支払うとの約定で、同社に賃貸する旨の契約を締結した。

<3> 原告博幸は、昭和五八年五月四日、有限会社スギウラ興産(以下「スギウラ興産」という。)との間において、原告博幸は、右<2>の契約の賃料月額八三万円の管理運用をスギウラ興産に委託し、スギウラ興産に対して同額の委託料を支払う旨の契約書を作成した。

<4> 原告博幸と中京佐川急便は、昭和六〇年六月、右<2>の契約の賃料を月額一六二万一九〇三円に増額する旨の合意をした。また、原告博幸と中京佐川急便は、昭和六三年七月七日、同年二月から右<2>の契約の賃料を月額二〇二万二五一三円に増額する旨の合意をした。

<5> 原告博幸とスギウラ興産は、昭和六〇年六月一〇日、右<3>の契約の委託料を月額一六二万一九〇三円に増額する旨の契約書を作成した。また、原告博幸とスギウラ興産は、昭和六三年七月二五日、右<3>の契約の委託料を同年二月から月額二〇二万二五一三円に増額する旨の契約書を作成した。

<6> 中京佐川急便は、右<2>の契約の賃料を、原告博幸名義の普通預金口座に振り込んで支払った。

<7> 以上のとおり、原告博幸は、中京佐川急便からの賃料収入を得ていたものであり、その額は、昭和六三年ないし平成二年の各年につき、それぞれ二四二七万〇一五六円である。

イ 別紙物件目録記載(二)の土地に係る賃料収入

<1> 杉浦昌子(以下「昌子」という。)、原告博幸及び原告健璽は、昭和四〇年八月一日、杉浦義孝から、相続を原因として、別紙物件目録記載(二)の土地(以下「桜町の土地」という。)を取得した(持分各三分の一)。

<2> スギウラ興産と杉浦製粉株式会社(以下「杉浦製粉」という。)との間において、昭和六一年一二月一日、スギウラ興産は、桜町の土地を、賃料月額一五万〇〇二二円、六箇月毎に六箇月分を前払するとの約定で、杉浦製粉に賃貸する旨の契約書を作成した。

<3> 昌子、原告博幸及び原告健璽は、同日、スギウラ興産との間において、昌子、原告博幸及び原告健璽は、右<2>の契約の賃料月額一五万〇〇二二円の管理運用をスギウラ興産に委託し、スギウラ興産に対して同額の委託料を支払う旨の契約書を作成した。

<4> スギウラ興産と杉浦製粉は、昭和六三年一二月一日、右<2>の契約の賃料を月額一五万七五六九円に増額する旨の契約書を作成した。

<5> 昌子、原告博幸及び原告健璽は、同日、スギウラ興産との間において、右<3>の契約の委託料を月額一五万七五六九円に増額する旨の契約書を作成した。

<6> 昌子は、平成元年九月二二日、桜町の土地の原告健璽の持分三分の一を取得した。

<7> 杉浦製粉は、右<2>の契約の賃料を支払った。

<8> 以上のとおり、杉浦製粉に対する桜町の土地の賃貸借については、スギウラ興産と杉浦製粉との間において賃貸借契約書が作成されているが、桜町の土地の所有者は、昌子、原告博幸及び原告健璽(平成元年九月二二日以降は、昌子と原告博幸)であることや、これらの者とスギウラ興産との間において、賃料の管理運用をスギウラ興産に委託する旨の契約書が作成されていることからすると、杉浦製粉が支払った桜町の土地の賃料は、昌子、原告博幸及び原告健璽(平成元年九月二二日以降は、昌子と原告博幸)に帰属し、スギウラ興産は、賃料の管理運用の受託者にすぎないものというべきである。

そうすると、原告博幸は、杉浦製粉からの賃料収入を得ていたものであり、その額は、昭和六三年ないし平成二年の各年につき、それぞれ杉浦製粉が支払った賃料額の三分の一に当たる次の金額である。

昭和六三年 六三万〇七五一円

平成元年 六三万〇二七六円

平成二年 六三万〇二七六円

ウ 別紙物件目録記載(三)の土地及び建物に係る賃料収入

<1> 原告博幸は、昭和四八年五月九日、杉浦貞三から、相続を原因として、別紙物件目録記載(三)(1)の土地を取得した。

原告博幸は、昭和四八年五月九日、杉浦貞三から、相続を原因として、別紙物件目録記載(三)(2)の建物を取得した。

昌子、原告博幸及び原告健璽は、昭和四〇年八月一日、杉浦義孝から、相続を原因として、別紙物件目録記載(三)(3)の建物(以下、別紙物件目録記載(三)の土地及び建物を、「貸家等」という。)を取得した(持分各三分の一)。

<2> 原告博幸は、別紙物件目録記載(三)(1)の土地及び同(2)の建物を、昌子、原告博幸及び原告健璽は、同(3)の建物を、それぞれ別表(一)記載の各賃借人に賃貸して、賃料の支払を受けた。

<3> 原告博幸が貸家等を賃貸して支払を受けた賃料の額は、別紙(一)記載のとおり(別紙物件目録記載(三)(3)の建物については、同表記載の金額は、賃借人が支払った賃料額の三分の一である。)であり、その合計額は、次のとおりである。

昭和六三年 六二八万二三九九円

平成元年 六五九万八七三三円

平成二年 六八八万三七三二円

エ 原告博幸の賃料収入の額は、右アないしウの金額を合計した次の金額となる。

昭和六三年 三一一八万三三〇六円

平成元年 三一四九万九一六五円

平成二年 三一七八万四一六四円

(2) 原告博幸が右(1)の賃料収入を得るのに要した必要経費

ア 管理料

<1> 右(1)ア<3>及び<5>のとおり、原告博幸とスギウラ興産との間には、原告博幸は、下管池の土地の賃料の管理運用をスギウラ興産に委託し、スギウラ興産に対して同額の委託料を支払う旨の契約書が存する。

右(1)イ<3>及び<5>のとおり、昌子、原告博幸及び原告健璽とスギウラ興産との間には、昌子、原告博幸及び原告健璽は、桜町の土地の賃料の管理運用をスギウラ興産に委託し、スギウラ興産に対して同額の委託料を支払う旨の契約書が存する。

<2> スギウラ興産は、法人税法二条一〇号に規定する同族会社に当たるところ、右<1>の管理料の額は、次の<3>で述べる適正な管理料の額を大きく上回るものであり、スギウラ興産の社員である原告博幸の所得税の負担を不当に減少させるものであるから、所得税法一五七条一項により、適正な管理料の範囲内についてのみ必要経費と認められる。

<3> 適正な管理料の額は次のとおりである。

a 被告は、原告の納税地であり、かつ、下管池及び桜町の各土地の所在地である安城市を所轄する刈谷税務署長及び刈谷税務署に隣接する地域を所管する熱田、半田、西尾、岡崎及び豊田の各税務署長に対して、対象年分を、昭和六三年、平成元年及び平成二年として、別紙「類似同業者抽出基準」に該当する者全員について、その賃料収入の金額及び支払管理料の金額について報告を求めたところ、報告があった。

そこで、報告があった者のうち、貸地のみを有する者と貸地及び貸家を有する者について抽出した結果が、別表(三)の(1)ないし(3)であるが、報告があった者のうちには、貸地のみを有する者はなかったので、抽出した者は、すべて貸地及び貸家を有する者でる。

なお、別紙「類似同業者抽出基準」(四)の金額は、いわゆる倍半基準を採用し、下管池の土地と桜町の土地についての昌子、原告博幸及び原告健璽の賃料収入を合計したものの半額から倍額までの金額とした。

b 下管池の土地と桜町の土地についてスギウラ興産が委託を受けている管理の内容は、特段ノウハウが必要であったり、特段手間がかかったりするものではないから、その適正な管理料の額の賃料に対する割合は、右の類似同業者の管理料の額の賃料の額に対する割合の平均値を上回るものではない。

c したがって、昌子、原告博幸及び原告健璽がスギウラ興産に支払うべき適正な管理料の額は、別表(四)に記載された金額を上回ることはない。

<4> よって、管理料の額は、次の金額を上回ることはない。

昭和六三年 一〇九万八一三〇円

平成元年 九六万八六二七円

平成二年 一〇九万三一二九円

イ 管理料以外の必要経費の額

管理料以外の必要経費の額は、次のとおりである。

<1> 昭和六三年

a 租税公課 三五二万七九〇六円

b 損害保険料 六万九三四〇円

c 修繕費 八三万四六一八円

d 通信費 七二七七円

e 車両運搬費 五万七二一三円

f 建物減価償却費 八〇万〇七一二円

g 雑費 一四万五五七九円

h 合計 五四四万二六四五円

<2> 平成元年

a 租税公課 三八九万五七四〇円

b 損害保険料 一〇万三五三三円

c 修繕費 六八万〇八七五円

d 通信費 七九九三円

e 車両運搬費 一八万一四四四円

f 建物減価償却費 八〇万〇七一二円

g 雑費 一三万一〇二六円

h 合計 五八〇万一三二三円

<3> 平成二年

a 租税公課 三九一万六七一六円

b 損害保険料 一〇万八五三二円

c 修繕費 三五万二八九〇円

d 通信費 一万〇九一八円

e 車両運搬費 一七万九五四五円

f 建物減価償却費 七七万六二八六円

g 雑費 一五万九一七六円

h 合計 五五〇万四〇六三円

ウ 合計

昭和六三年 六五四万〇七七五円

平成元年 六七六万九九五〇円

平成二年 六五九万七一九二円

(3) 原告博幸の総所得金額及び税額

ア 昭和六三年分

<1> 不動産所得の金額 二四六四万二五三一円

右(1)の賃料収入から右(2)の必要経費を差し引いた金額

<2> 給与所得の金額 七三三万三一五三円

原告博幸が、安城市農業協同組合から受領した給与収入金額三三六万四六一五円とスギウラ興産から受領した役員報酬額六〇〇万円の合計額から給与所得控除額二〇三万一四六二円を控除した金額

<3> 総所得金額 三一九七万五六八四円

右<1>の金額と右<2>の金額の合計額

<4> 所得控除の額 一二四万二一八〇円

a 社会保険料控除 二三万三〇九〇円

b 小規模企業共済等掛金控除 六一万四〇九〇円

c 生命保険料控除 五万円

d 損害保険料控除 一万五〇〇〇円

e 基礎控除 三三万円

f 合計 一二四万二一八〇円

<5> 課税される所得金額 三〇七三万三〇〇〇円(千円未満の端数切捨て)

<6> 算出税額 一一四六万六五〇〇円

<7> 源泉徴収税額 二一〇万〇八〇〇円

<8> 納付すべき税額 九三六万五七〇〇円

イ 平成元年分

<1> 不動産所得の金額 二四七二万九二一五円

右(1)の賃料収入から右(2)の必要経費を差し引いた金額

<2> 給与所得の金額 一〇〇五万二九九九円

原告博幸が、安城市農業協同組合から受領した給与収入金額三八六万一〇五二円、スギウラ興産から受領した役員報酬額七八〇万円及び昌子から受領した青色申告専従者給与六〇万円の合計額から給与所得控除額二二〇万八〇五三円を控除した金額

<3> 総所得金額 三四七八万二二一四円

右<1>の金額と右<2>の金額の合計額

<4> 所得控除の額 一二六万七三七一円

a 社会保険料控除 二五万二三七一円

b 小規模企業共済等掛金控除 六〇万円

c 生命保険料控除 五万円

d 損害保険料控除 一万五〇〇〇円

e 基礎控除 三五万円

f 合計 一二六万七三七一円

<5> 課税される所得金額 三三五一万四〇〇〇円(千円未満の端数切捨て)

<6> 算出税額 一二八五万七〇〇〇円

<7> 源泉徴収税額 二九六万四五〇〇円

<8> 納付すべき税額 九八九万二五〇〇円

ウ 平成二年分

<1> 不動産所得の金額 二五一八万六九七二円

右(1)の賃料収入から右(2)の必要経費を差し引いた金額

<2> 給与所得の金額 九三七万九八六七円

原告博幸が、安城市農業協同組合から受領した給与収入金額四二三万二四九二円、スギウラ興産から受領した役員報酬額六七二万円及び昌子から受領した青色申告専従者給与六〇万円の合計額から給与所得控除額二一七万二六二五円を控除した金額

<3> 総所得金額 三四五六万六八三九円

右<1>の金額と右<2>の金額の合計額

<4> 所得控除の額 一三三万〇〇四八円

a 社会保険料控除 三一万五〇四八円

b 小規模企業共済等掛金控除 六〇万円

c 生命保険料控除 五万円

d 損害保険料控除 一万五〇〇〇円

e 基礎控除 三五万円

f 合計 一三三万〇〇四八円

<5> 課税される所得金額 三三二三万六〇〇〇円(千円未満の端数切捨て)

<6> 算出税額 一二七一万八〇〇〇円

<7> 源泉徴収税額 二四八万〇四〇〇円

<8> 納付すべき税額 一〇二三万七六〇〇円

(4) 右(3)の総所得金額及び納付すべき税額は、いずれも第二の一1ないし3の各処分における総所得金額及び納付すべき税額を上回るから、これらの各処分は適法でる。

(二) 原告健璽について

(1) 原告健璽の賃料収入

ア 別紙物件目録記載(二)の土地に係る賃料収入

右(一)(1)イのとおり、原告健璽は、別紙物件目録記載(二)の土地の共有者として、この土地を杉浦製粉に賃貸して、賃料収入を得ていた。

杉浦製粉が支払った資料のうち、原告健璽に帰属するものは、次のとおりである。

昭和六三年 六三万〇七五一円

平成元年 三一万五一三八円

イ 別紙物件目録記載(三)(3)の建物に係る賃料収入

右(一)(1)ウのとおり、原告健璽は、別紙物件目録記載(三)(3)の建物の共有者として、右建物を賃貸して、賃料収入を得ていた。

賃借人が支払った賃料のうち、原告健璽に帰属するものは、別表(二)のとおりであり、その金額の合計は、次のようになる。

昭和六三年 一七万四九九九円

平成元年 一五万八三三三円

平成二年 二一万三三三二円

ウ 原告健璽の資料収入の額は、右ア及びイの金額を合計した次の金額となる。

昭和六三年 八〇万五七五〇円

平成元年 四七万三四七一円

平成二年 二一万三三三二円

(2) 原告健璽が右(1)の賃料収入を得るのに要した必要経費

ア 管理料

<1> 右(一)(1)イ<3>及び<5>のとおり、昌子、原告博幸及び原告健璽とスギウラ興産との間には、昌子、原告博幸及び原告健璽は、桜町の土地の資料の管理運用をスギウラ興産に委託し、スギウラ興産に対して同額の委託料を支払う旨の契約書が存する。

<2> スギウラ興産は、法人税法二条一〇号が規定する同族会社に当たるところ、右<1>の管理料の額は、右(一)(2)ア<3>のとおり適正な管理料の額を大きく上回るものであり、スギウラ興産の社員である原告健璽の所得税の負担を不当に減少させるものであるから、所得税法一五七条一項により、適正な管理料の範囲内についてのみ必要経費と認められる。

<3> よって、管理料の額は、次の金額を上回ることはない。

昭和六三年 二万七八一七円

平成元年 一万二二五九円

イ 管理料以外の必要経費の額

管理料以外の必要経費の額は、次のとおりである。

<1> 昭和六三年

a 租税公課 一〇万九四五四円

b 損害保険料 一九四一円

c 修繕費 二万三三五五円

d 通信費 二〇五円

e 車両運搬費 一六〇二円

f 建物減価償却費 一万五八五四円

g 雑費 四〇七五円

h 合計 一五万六四八六円

<2> 平成元年

a 租税公課 八万一六〇六円

b 損害保険料 二四六七円

c 修繕費 一万六二二四円

d 通信費 一九二円

e 車両運搬費 四三二五円

f 建物減価償却費 一万五八五四円

g 雑費 三一二三円

h 合計 一二万三七九一円

<3> 平成二年

a 租税公課 一万三七三七円

b 損害保険料 三三六四円

c 修繕費 一万〇九三八円

d 通信費 三三九円

e 車両運搬費 五五六五円

f 建物減価償却費 一万五八五四円

g 雑費 一万三七四三円

h 合計 六万三五四〇円

ウ 合計

昭和六三年 一八万四三〇三円

平成元年 一三万六〇五〇円

平成二年 六万三五四〇円

(3) 原告健璽が総所得金額及び税額

ア 昭和六三年分

<1> 不動産所得の金額 六二万一四四七円

右(1)の賃料収入から右(2)の必要経費を差し引いた金額

<2> 給与所得の金額 三七二万九〇〇〇円

原告健璽が、合資会社安城建築から受領した給与収入金額一〇七万〇二〇〇円と、株式会社ミカワクリエートから受領した給与収入金額七三万二〇〇〇円、スギウラ興産から受領した役員報酬額二八八万円及び昌子から受領した青色申告専従者給与六〇万円の合計額から給与所得控除額一五五万三二〇〇円を控除した金額

<3> 総所得金額 四三五万〇四四七円

右<1>の金額と右<2>の金額の合計額

<4> 所得控除の額 一一二万五五九二円

a 社会保険料控除 一三万一五〇二円

b 小規模企業共済等掛金控除 六一万四〇九〇円

c 生命保険料控除 五万円

d 基礎控除 三三万円

e 合計 一一二万五五九二円

<5> 課税される所得金額 三二二万四〇〇〇円(千円未満の端数切捨て)

<6> 算出税額 三四万四八〇〇円

<7> 源泉徴収税額 五七万六三一〇円

<8> 還付金の額に相当する税額 二三万一五一〇円

イ 平成元年分

<1> 不動産所得の金額 三三万七四二一円

右(1)の賃料収入から右(2)の必要経費を差し引いた金額

<2> 給与所得の金額 五〇九万五二〇〇円

原告健璽が、株式会社ミカワクリエートから受領した給与収入金額二一九万八〇〇〇円、スギウラ興産から受領した役員報酬額三八四万円及び昌子から受領した青色申告専従者給与八四万円の合計額から給与所得控除額一七八万二八〇〇円を控除した金額

<3> 総所得金額 五四三万二六二一円

右<1>の金額と右<2>の金額の合計額

<4> 所得控除の額 一一六万五〇三八円

a 社会保険料控除 一六万五〇三八円

b 小規模企業共済等掛金控除 六〇万円

c 生命保険料控除 五万円

d 基礎控除 三五万円

f 合計 一一六万五〇三八円

<5> 課税される所得金額 四二六万七〇〇〇円(千円未満の端数切捨て)

<6> 算出税額 五五万三四〇〇円

<7> 源泉徴収税額 九一万四四七〇円

<8> 還付金の額に相当する税額 三六万一〇七〇円

ウ 平成二年分

<1> 不動産所得の金額 一四万九七九二円

右(1)の賃料収入から右(2)の必要経費を差し引いた金額

<2> 給与所得の金額 五一〇万八五二〇円

原告健璽が、株式会社ミカワクリエートから受領した給与収入金額二八一万二八〇〇円、スギウラ興産から受領した役員報酬額三二四万円及び昌子から受領した青色申告専従者給与八四万円の合計額から給与所得控除額一七八万四二八〇円を控除した金額

<3> 総所得金額 五二五万八三一二円

右<1>の金額と右<2>の金額の合計額

<4> 所得控除の額 一二三万五四三一円

a 社会保険料控除 二三万五四三一円

b 小規模企業共済等掛金控除 六〇万円

c 生命保険料控除 五万円

d 基礎控除 三五万円

e 合計 一二三万五四三一円

<5> 課税される所得金額 四〇二万二〇〇〇円(千円未満の端数切捨て)

<6> 算出税額 五〇万四四〇〇円

<7> 源泉徴収税額 六七万四七〇〇円

<8> 還付金の額に相当する税額 一七万〇三〇〇円

(4) 右(3)の総所得金額は、いずれも第二の一5ないし7の各処分における総所得金額(異議決定によって一部取り消されたものについては、取消後の金額)を上回り、右(3)の還付金の額に相当する税額は、いずれも第二の一5ないし7の各処分における還付金の額に相当する税額(異議決定によって一部取り消されたものについては、取消後の金額)を下回るから、これらの各処分は適法である。

2  原告らの主張

(一) 下菅池の土地、桜町の土地及び貸家等の賃貸人について

(1) 下菅池の土地について

ア 原告博幸が、昭和四八年五月九日、杉浦貞三から、相続を原因として、下菅池の土地を取得したこと、原告博幸が、昭和五六年一一月一六日、中京佐川急便との間において、下菅池の土地を、賃料月額八三万円、毎月末日までに翌月分を支払うとの約定で、同社に賃貸する旨の契約を締結したこと、以上の各事実(右1(一)(1)ア<1>及び<2>の事実)は認める。

イ 原告博幸は、右のとおり、中京佐川急便に対して下菅池の土地を賃貸したが、昭和五八年五月四日にスギウラ興産が設立されたことにより、賃貸人たる地位は、原告博幸からスギウラ興産に譲渡され、以後、スギウラ興産が中京佐川急便から賃料を取得してきた。

したがって、昭和五八年五月四日以降に中京佐川急便が下菅池の土地について支払った賃料は、原告博幸ではなく、スギウラ興産に帰属する。

ウ 被告が右1(一)(1)ア<3>で主張するように、原告博幸が、右契約の賃料の管理運用をスギウラ興産に委託し、スギウラ興産に対して同額の委託料を支払う旨の契約書が存するが、原告博幸が、預託した賃料と同額の委託料を支払うということは、異常きわまることであり得ないことである上、スギウラ興産が右契約の賃料の預託を受けて管理運用した事実はなく、また、賃料の預託を受けて管理運用することはスギウラ興産の目的の範囲外であるから、右契約書は、意味不明の実行不可能なもので、実際に実行されたこともない。

したがって、右契約書の内容に従った契約は存在せず、右契約書が存することを理由として、下菅池の土地の賃貸人は原告博幸であるということはできない。

エ 右契約の賃料は、昭和六〇年六月六日と昭和六三年七月七日の各契約によって増額され、その際の契約書は、原告博幸と中京佐川急便との間において作成されているが、それらの契約書は、原告博幸が誤まって作成したものであるから、右契約書が存することを理由として、下菅池の土地の賃貸人は原告博幸であるということはできない。

オ 被告が右1(一)(1)ア<6>で主張するように、中京佐川急便が右契約の賃料を原告博幸名義の普通預金口座に振り込んで支払っていた事実はあるが、それは、平成三年七月分までであって、同年八月分からは、右契約の賃料をスギウラ興産名義の普通預金口座に振り込んで支払っている。

また、原告博幸は、賃料が同原告名義の普通預金口座に振り込まれていた時期には、その賃料を直ちにスギウラ興産名義の普通預金口座に移していた。

したがって、賃料が振り込まれていた預金口座の名義から、下菅池の土地の賃貸人は原告博幸であるということはできない。

(2) 桜町の土地について

ア 昌子、原告博幸及び原告健璽が、昭和四〇年八月一日、杉浦義孝から、相続を原因として、桜町の土地を取得したこと、昌子、原告博幸及び原告健璽の持分が各三分の一であること、以上の事実

(右1(一)(1)イ<1>の事実)は認める。

イ スギウラ興産は、昭和六一年一二月一日、杉浦製粉に対して、桜町の土地を賃貸し、以後、その賃料を取得してきたから、杉浦製粉が桜町の土地について支払った賃料は、昌子、原告博幸及び原告健璽ではなく、スギウラ興産に帰属する。

ウ 被告右1(一)(1)イ<3>で主張するように、昌子、原告博幸及び原告健璽が、右契約の賃料の管理運用をスギウラ興産に委託し、スギウラ興産に対して同額の委託料を支払う旨の契約書が存するが、昌子、原告博幸及び原告健璽が預託した賃料と同額の委託料を支払うということは、異常きわまることであり得ないことである上、スギウラ興産が右契約の賃料の預託を受けて管理運用した事実はなく、また、賃料の預託を受けて管理運用することはスギウラ興産の目的の範囲外であるから、右契約書は、意味不明の実行不可能なもので、実際に実行されたこともない。

したがって、右契約書の内容に従った契約は存在せず、右契約書が存することを理由として、桜町の土地の賃貸人は、昌子、原告博幸及び原告健璽であということはできない。

(3) 貸家等について

ア 原告博幸が、昭和四八年五月九日、杉浦貞三から、相続を原因として、別紙物件目録記載(三)(1)の土地を取得したこと、原告博幸が、昭和四八年五月九日、杉浦貞三から、相続を原因として、別紙物件目録記載(三)(2)の建物を取得したこと、昌子、原告博幸及び原告健璽が、昭和四〇年八月一日、杉浦義孝から、相続を原因として、別紙物件目録記載(三)(3)の建物を取得したこと、これらの建物についての昌子、原告博幸及び原告健璽の持分が各三分の一であること、以上の各事実(右1(一)(1)ウイ<1>の事実)は認める。

イ 杉浦貞三は、昭和四八年五月九日に死亡するまで、貸家等を賃貸して、その賃料を取得していた。杉浦貞三死亡後は、杉浦こまが、貸家等を賃貸して、その賃料を取得していたが、昭和五一年六月、杉浦こまが昌子に対して「世帯譲り」をしたことによって、昌子が貸家等の賃貸人となり、以後、賃料を取得してきた。

したがって、貸家等の賃料は、すべて昌子の帰属し、原告らに帰属することはない。

(二) 原告らの総所得金額の算定に当たってスギウラ興産からの役員報酬を含めながら下菅池の土地及び桜町の土地の賃料が原告らに帰属するとしてその賃料収入に課税することについて

昌子、原告博幸及び原告健璽に対する役員報酬は、実質的に見ると、下菅池の土地及び桜町の土地の賃料の分配であって、下菅池の土地の賃料が、原告博幸に、桜町の土地の賃料が、昌子、原告博幸及び原告健璽に帰属し、スギウラ興産に帰属しないとすると、スギウラ興産は、昌子、原告博幸及び原告健璽に役員報酬を支払うことができない。

したがって、下菅池の土地の賃料が、原告博幸に、桜町の土地の賃料が、昌子、原告博幸及び原告健璽に帰属すると認定するのであれば、原告らの総所得金額の算定に当たって、スギウラ興産からの役員報酬を除くべきであって、原告らの総所得金額の算定に当たって、スギウラ興産からの役員報酬を含めながら、下菅池の土地及び桜町の土地の賃料が原告らに帰属するとしてその賃料収入に課税することは、著しく不合理、不自然であり、原告らの総所得金額を不当に増大させることになるから、違法であるばかりか、憲法三〇条に違反するというべきである。

(三) 被告主張の適正な管理料の額(右(一)(2)ア<3>)については、争う。

3  被告の反論(右2(二)に対して)

下菅池の土地及び桜町の土地の賃料と役員報酬は、発生根拠を異にする別個の所得であるから、前者が後者の原資に当てられるという関係があるとしても、下菅池の土地及び桜町の土地の賃料が、スギウラ興産に帰属しないとしながら、原告らの総所得金額の算定に当たって、スギウラ興産からの役員報酬を含めることは、何ら不合理ではない。

第三証拠

本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用する。

第四当裁判所の決断

一  原告博幸について

1  賃料収入について

(一) 下菅池の土地に係る賃料収入

(1) 原告博幸が、昭和四八年五月九日、杉浦貞三から、相続を原因として、下菅池の土地を取得したこと、原告博幸が、昭和五六年一一月一六日、中京佐川急便との間において、下菅池の土地を、賃料月額八三万円、毎月末日までに翌月分を支払うとの約定で、同社に賃貸する旨の契約を締結したこと、以上の各事実は、当事者間に争いがない。

(2) 証拠(第三五号事件の乙三ないし八、第三六号事件の乙四、証人伊吹誠光)と弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。

ア 昭和五八年五月四日、スギウラ興産が設立された。同社は、昌子、原告博幸、原告健璽らを社員とする有限会社で、昌子、原告博幸らが取締役に就任した。代表取締役には、昌子が就任した。

イ スギウラ興産設立後、原告博幸とスギウラ興産との間において、原告博幸は、下菅池の土地の賃料月額八三万円の管理運用をスギウラ興産に委任し、スギウラ興産に対して、委任料として月額八三万円を支払う旨の、昭和五八年五月四日付けの契約書が作成された。

ウ 原告博幸と中京佐川急便との間において、昭和六〇年六月六日、右(1)の賃貸借契約の賃料を月額一六二万一九〇三円とする旨の契約書が作成された。その後、原告博幸とスギウラ興産との間において、原告博幸は、下菅池の土地の賃料月額一六二万一九〇三円の管理運用をスギウラ興産に委任し、スギウラ興産に対して、委任料として月額一六二万一九〇三円を支払う旨の、昭和六〇年六月一〇日付けの契約書が作成された。

エ 原告博幸と中京佐川急便との間において、昭和六三年七月七日、同年二月から右(1)の賃貸借契約の賃料を月額二〇二万二五一三円とする旨の契約書が作成された。その後、原告博幸とスギウラ興産との間において、原告博幸は、下菅池の土地の賃料月額二〇二万二五一三円の管理運用をスギウラ興産に委任し、スギウラ興産に対して、委任料として月額二〇二万二五一三円を支払う旨の、昭和六三年七月二五日付けの契約書が作成された。

オ 中京佐川急便は、右(1)の賃貸借契約の賃料を、原告博幸名義の普通預金口座に振り込んで支払っていたが、平成三年八月ころから、スギウラ興産名義の普通預金口座に振り込んで支払うようになった。

(3) 右(1)及び(2)の事実によると、右(1)の賃貸借契約は、もともと原告博幸と中京佐川急便との間において締結されたものであり、スギウラ興産が設立された後も、原告博幸と中京佐川急便との間において賃料の増額に関する契約書が交わされ、賃料も原告博幸名義の口座に振り込まれていたものと認められる。

そして、原告博幸とスギウラ興産との間には、原告博幸は、下菅池の土地の賃料の管理運用をスギウラ興産に委任し、スギウラ興産に対して、同額の委任料を支払う旨の契約が締結されていたものと認められる。

そうすると、右(1)の賃貸借契約の賃貸人は、スギウラ興産が設立された後も、原告博幸であって、原告博幸が、右契約の賃料を取得していたのであり、スギウラ興産は、賃貸人たる原告博幸から、右契約の賃料の管理運用を委任されていたにすぎないものと認めるのが相当である。

(4) 証人伊吹誠光は、右(1)の賃貸借契約の賃貸人の地位は、スギウラ興産が設立された昭和五八年五月四日に、原告博幸からスギウラ興産に譲渡された旨の証言をするほか、証拠(甲二の一、甲三、証人伊吹誠光)によると、原告博幸とスギウラ興産との間において、平成四年になってから、原告博幸は、スギウラ興産に対し、昭和五八年五月四日をもって、下菅池の土地に関する一切の管理権限(処分以外の保存、利用、改良その他一切の行為をなす権限)を委譲し、右(1)の賃貸借契約の賃貸人の地位を譲渡する旨の契約書が作成されたこと、スギウラ興産と佐川急便株式会社との間において、平成四年七月二一日に、スギウラ興産が昭和五八年五月四日に原告博幸から右(1)の賃貸借契約の賃貸人の地位を継承したこと、佐川急便株式会社が平成四年五月一日に中京佐川急便から合併によって右(1)の賃貸借契約の賃借人の地位を継承したこと等を内容とする公正証書が作成されたこと、以上の各事実が認められる。

しかしながら、右認定の原告博幸とスギウラ興産との間の契約書やスギウラ興産と佐川急便株式会社との間の公正証書は、本訴で争われている前記第二の一1ないし3の各処分がされた平成四年になってから作成されたものであり、右(3)認定のとおり、右(1)の賃貸借契約の賃貸人の地位がスギウラ興産に譲渡されたことについては、それと反対の事実が認められるから証人伊吹誠光の右証言及び右認定の原告博幸とスギウラ興産との間の契約書やスギウラ興産と佐川急便株式会社との間の公正証書の記載を信用することはできない。

(5) また、原告らは、右(2)イ認定の契約書について、原告博幸が預託した賃料と同額の委託料を支払うということは、異常きわまることであり得ないことである上、スギウラ興産が右(1)の賃貸借契約の賃料の預託を受けて管理運用をした事実はなく、また、賃料の預託を受けて管理運用をすることはスギウラ興産の目的の範囲外であるから、右契約書は、意味不明の実行不可能なもので、実際に実行されたこともない、したがって、右契約書の内容に従った契約は存在しなかった旨の主張をする。

確かに、管理運用を委任した賃料と同額の委託料を支払うという約定は、異例のものであるということができる。しかし、原告博幸は、右委託料が全額必要経費と認められれば、賃料収入があってもそれに関する所得が存在しないことになって、所得税の支払を免れること、証拠(証人伊吹誠光)によると、右(2)イ認定の契約書は、税理士が作成したものと認められること及び所得税の支払を免れること以外の目的で右のような約定を設ける理由は認められないことを総合すると、右のような異例の約定がされたのは、原告博幸が所得税の支払を免れるためであったものと認められ、そうであるとすると、右のような約定がされたとしても不自然ではない。

さらに、証拠(第三五号事件、第三六号事件の各乙四)によると、スギウラ興産の目的は、「<1>土地、建物の賃貸、賃借、管理、運営、<2>土地、建物の売買及び仲介、<3>右<1><2>に付帯関連する一切の業務」であることが認められるから、右(2)イ認定の契約書に記載されている賃料の管理運用が、その目的に含まれないということはできないし、その他、スギウラ興産が賃料の管理運用をすることができないものとすべき事情を認めることはできない。

そして、右(2)オで認定したとおり、平成三年八月ころから、スギウラ興産が自社の預金口座に賃料の振込みを受けていることからすると、スギウラ興産が右(1)の賃貸借契約の賃料について管理運用をした事実が全くないとまでいうことはできないし、そもそもスギウラ興産が右(1)の賃貸借契約の賃料について管理運用をした事実がなかったとしても、そのことは、直ちに右(2)イ認定の契約書の内容に従った契約の成立を認めることの妨げとなるものではない。

したがって、右(2)イ認定の契約書の内容に従った契約の成立を認めることの妨げとなる事情は存在しないものというべきである。

(6) よって、原告博幸は、下菅池の土地について賃料収入があったものと認められるが、その額は、右(2)の事実に弁論の全趣旨を総合すると、昭和六三年から平成二年までの各年につき、それぞれ二四二七万〇一五六円であったものと認められる。

(二) 桜町の土地に係る賃料収入

(1) 昌子、原告博幸及び原告健璽が、昭和四〇年八月一日、杉浦義孝から、相続を原因として、桜町の土地を取得したこと、昌子、原告博幸及び原告健璽の持分が三分の一であること、以上の事実は当事者間に争いがない。

(2) 証拠(第三五号事件の乙二、乙一〇の一、二、乙一一ないし一四、第三六号事件の乙一の一、二、乙二、三、乙五ないし七、証人伊吹誠光)と弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。

ア スギウラ興産と杉浦製粉との間において、昭和六一年一二月一日、スギウラ興産は、桜町の土地を、賃料月額一五万〇〇二二円、六箇月毎に六箇月分を前払するとの約定で、杉浦製粉に賃貸する旨の契約書が作成された。

イ 昌子、原告博幸及び原告健璽とスギウラ興産との間において、同日、昌子、原告博幸及び原告健璽は、右アの契約の賃料月額一五万〇〇二二円の管理運用をスギウラ興産に委託し、スギウラ興産に対して同額の委任料を支払う旨の契約書が作成された。

ウ スギウラ興産と杉浦製粉との間において、右アの契約の賃料を昭和六三年一二月分から月額一五万七五六九円とする旨の昭和六三年一二月一日付けの契約書が作成された。

また、右契約書が作成されたころ、昌子、原告博幸及び原告健璽とスギウラ興産との間において、昌子、原告博幸及び原告健璽は、右アの契約の賃料月額一五万七五六九円の管理運用をスギウラ興産に委任し、スギウラ興産に対して同額の委任料を支払う旨の昭和六三年一二月一日付けの契約書が作成された。

エ 平成元年九月二二日、真正な登記名義の回復を原因として、桜町の土地の原告健璽の持分三分の一について、原告健璽から昌子に対して持分移転登記がされたが、右移転登記は、平成五年七月五日、錯誤を理由に抹消された。

オ 杉浦製粉は、右アの契約の賃料を、右約定の時期にスギウラ興産名義の預金口座に振り込んで支払っていた。

(3) 右(1)及び(2)の事実によると、桜町の土地は、昌子、原告博幸及び原告健璽三名の共有(右(2)エ認定のとおり、平成元年九月二二日に、持分移転登記がされているが、この登記は後に抹消されており、同日原告健璽から昌子に対して持分の移転があったとは認められない。)であったこと、昭和六一年一二月一日、桜町の土地について、スギウラ興産と杉浦製粉との間で賃貸借契約が締結されたこと、昌子、原告博幸及び原告健璽とスギウラ興産との間において、昌子、原告博幸及び原告健璽は、スギウラ興産に対して、右契約の賃料の管理運用を委任し、同額の委任料を支払う旨の契約が締結されたこと、杉浦製粉は、右契約の賃料を、スギウラ興産名義の預金口座に振り込んで支払っていたこと、以上の各事実が認められる。

そして、以上の事実に、スギウラ興産が右三名の共有者から桜町の土地を賃借するなど、桜町の土地の賃料を取得する権限を有していたとすべき事情が認められないことを総合すると、右の杉浦製粉との賃貸借契約の賃貸人はスギウラ興産でありスギウラ興産が賃料の支払を受けていたが、スギウラ興産は、桜町の土地について、右の三名の共有者のために、自己の名で賃貸借契約を締結したもので、その取得した賃料を右の三名の共有者に引き渡す義務を負っていたものというべきである。もっとも、証拠(証人伊吹誠光)と弁論の全趣旨によると、スギウラ興産は、その取得した賃料を右の三名の共有者に現実に引き渡していないことが認められるが、それは、右の三名の共有者において、スギウラ興産に対して、右契約の賃料の管理運用を委任し、同額の委任料を支払う旨の契約が締結されていたためであると認められる。

そうすると、右契約による賃料は、昌子、原告博幸及び原告健璽の三名に帰属するものと認められる。

(4) なお、証拠(甲二の二、証人伊吹誠光)によると、昌子、原告博幸及び原告健璽とスギウラ興産との間には、昌子、原告博幸及び原告健璽は、スギウラ興産に対し、昭和六一年一二月一日をもって、桜町の土地に関する一切の管理権限(処分以外の保存、利用、改良その他一切の行為をなす権限)を委譲する旨の契約書が存在することが認められるが、証拠(証人伊吹誠光)によると、これは、本訴で争われている前記第二の一1ないし3、5ないし7の各処分がされた平成四年になってから作成されたものであることが認められるから、右契約書が存在するからといって、右の杉浦製粉との賃貸借契約が締結された昭和六一年当時、スギウラ興産が右契約書に記載されたような権限を有していたと認めることはできないし、また、仮に、その当時から、スギウラ興産が右契約書に記載されたような権限を有していたとしても、スギウラ興産は、その取得した賃料を昌子、原告博幸及び原告健璽に引き渡す義務を負っていたものというべきであるから、桜町の土地の賃料が昌子、原告博幸及び原告健璽の三名に帰属する旨の右認定を左右するものではない。

また、原告らは、右(2)イ認定の契約書について、昌子、原告博幸及び原告健璽が預託した賃料と同額の委託料を支払うということは、異常きわまることであり得ないことである上、スギウラ興産が右の杉浦製粉との賃貸借契約の賃料の預託を受けて管理運用をした事実はなく、また、賃料の預託を受けて管理運用することはスギウラ興産の目的の範囲外であるさら、右契約書は、意味不明の実行不可能なもので、実際に実行されたこともない、したがって、右契約書の内容に従った契約は存在しなかった旨の主張をする。しかし、管理運用を委任した賃料と同額の委託料を支払うという約定が不自然でないことやスギウラ興産が賃料の管理運用をすることができないものとすべき事情を認めることはできないことは、右(一)(5)で述べたとおりであるし、右(2)で認定したとおり、スギウラ興産が右の杉浦製粉との賃貸借契約の賃料を受領するなどしていたことからすると、スギウラ興産は右契約の賃料の管理をしていたものということができるから、右(2)イ認定の契約書の内容に従った契約の成立を認めることの妨げとなる事情は存在しないものというべきである。

(5) よって、原告博幸には、桜町の土地に係る賃料収入があったものと認められるが、その額は、右(2)の事実に弁論の全趣旨を総合すると、昭和六三年ないし平成二年の各年につき、それぞれ杉浦製粉が支払った賃料額の三分の一に当たる次の金額であったものと認められる。

昭和六三年 六三万〇七五一円

平成元年 六三万〇二七六円

平成二年 六三万〇二七六円

(三) 貸家等に係る賃料収入について

(1) 原告博幸が、昭和四八年五月九日、杉浦貞三から、相続を原因として、別紙物件目録記載(三)(1)の土地を取得したこと、原告博幸が、昭和四八年五月九日、杉浦貞三から、相続を原因として、別紙物件目録記載(三)(2)の建物を取得したこと、昌子、原告博幸及び原告健璽が、昭和四〇年八月一日、杉浦義孝から、相続を原因として、別紙物件目録記載(三)(3)の建物を取得したこと、これらの建物についての昌子、原告博幸及び原告健璽の持分は各三分の一であること、以上の各事実は、当事者間に争いがない。

(2) 証拠(証人伊吹誠光、同杉浦昌子、原告杉浦博幸、同杉浦健璽)と弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。

ア 貸家等は、別表(一)記載の各賃借人が賃借して賃料を支払っていた。

イ 杉浦貞三が昭和四八年五月九日に死亡した後は、同人の妻であった杉浦こまが、貸家等の家賃を受領していたが、昌子は、昭和五一年六月に、杉浦こまから、「世帯譲り」を受けた。そした、それ以後は、昌子が、貸家等の賃料を集金受領して、使用してきた。

ウ 原告博幸は、昭和三五年生まれ、原告健璽は、昭和三八年生まれで、昭和五一年当時は、未成年者であった。

昌子は、原告らの母親であり、原告らが学生の間は原告らを養育していたが、原告らが就職した後も原告らと同居し生計を一にしてきた。しかし、原告健璽は、平成七年六月二二日に転居して、昌子及び原告博幸とは別に生活するようになった。

エ 昌子が集金受領した右賃料は、昌子及び原告ら一家のために、その生活費等として使用されたきた。

(3) 右(1)及び(2)の事実に、昌子が、原告らから貸家等を賃借するなど、自らが賃貸人となって貸家等を賃貸する権限を原告らから与えられていたとすべき事情は認められないことを総合すると、貸家等の賃貸人は、その所有者(別紙物件目録記載(三)(1)の土地及び別紙物件目録記載(三)(2)の建物については、原告博幸、別紙物件目録記載(三)(3)の建物については、昌子、原告博幸及び原告健璽)であって、それらの者に賃料が帰属するものと認めることができ、昌子が貸家等の賃料を集金受領して使用してきた事実があったとしても、それは、昌子が、原告らの母親又は原告らを含む一家の長という立場上、原告らの代理人として、貸家等の賃料を受領して、原告らを含む一家のために使用してきたものと認めることが相当である。

(4) よって、原告博幸は、貸家等に係る賃料収入があったものと認められるが、その額は、右(2)の事実に弁論の全趣旨を総合すると、別表(一)記載のとおりであったもの(別紙物件目録記載(三)(3)の建物については、同表記載の金額は、賃借人が支払った賃料額の三分の一である。)と認められ、その合計額は、次のとおりである。

昭和六三年 六二八万二三九九円

平成元年 六五九万八七三三円

平成二年 六八八万三七三二円

(四) 合計額

原告博幸の賃料収入の額は、右(一)ないし(三)の金額を合計した次の金額となる。

昭和六三年 三一一八万三三〇六円

平成元年 三一四九万九一六五円

平成二年 三一七八万四一六四円

2  右1の賃料収入を得るのに要した必要経費について

(一) 管理料

(1) 右1(一)及び(二)で認定したとおり、原告博幸とスギウラ興産との間には、原告博幸は、下菅池の土地の賃料の管理運用をスギウラ興産に委任し、スギウラ興産に対して、同額の委任料を支払う旨の契約が、昌子、原告博幸及び原告健璽とスギウラ興産との間には、昌子、原告博幸及び原告健璽は、スギウラ興産に対して、桜町の土地の賃料の管理運用を委任し、同額の委任料を支払う旨の契約が、それぞれ締結されていたことが認められる。

(2) しかしながら、昭和六三年から平成二年までの間に、スギウラ興産が、下菅池の土地の賃料について何らかの管理を行ったことを具体的に認めるに足りる証拠はない。また、スギウラ興産は、右1(二)で認定したとおり、桜町の土地については、右契約に従って賃料を受領するなどしてきたものと認められるが、右1(二)で認定した以上に、桜町の土地の賃料について管理を行ったことを具体的に認めるに足りる証拠はない。

さらに、下菅池の土地と桜町の土地についてスギウラ興産が委任を受けている賃料の管理は、特段ノウハウが必要であったり、特段手間がかかったりするものであるとすべき事情は認められない。

以上述べたところからすると、右(1)の契約に基づいてスギウラ興産に対して支払われるべき適正な管理料の額の賃料の額に対する割合は、類似同業者の管理料の額の賃料の額に対する割合の平均値を上回るものではないというべきである。

(3) しかるところ

ア 証拠(第三五号事件の乙一六、乙一七ないし二〇の各一ないし三、乙二一の一ないし四、乙二二の一ないし三、第三六号事件の乙八、乙九ないし一二の各一ないし三、乙一三の一ないし四、乙一四の一ないし三)と弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。

<1> 被告は、原告の納税地であり、かつ、下菅池及び桜町の各土地の所在地である安城市を所轄する刈谷税務署長及び刈谷税務署に隣接する地域を所管する熱田、半田、西尾、岡崎及び豊田の各税務署長に対して、対象年分を、昭和六三年、平成元年及び平成二年として、別紙「類似同業者抽出基準」に該当する者全員について、その賃料収入の金額及び支払管理料の金額について報告を求め、全員から報告を受けた。

なお、別紙「類似同業者抽出基準」(四)の金額は、いわゆる倍半基準を採用したもので、下管池の土地と桜町の土地についての昌子、原告博幸及び原告健璽の賃料収入を合計したものの半額から倍額までの金額である。

<2> 被告において、右の報告があった者の中から、貸地のみを有する者と貸地及び貸家を有する者を抽出したところ、その結果は、別表(三)の(1)ないし(3)のとおりであった。

なお、報告があった者の中には、貸地のみを有する者はなかったので、抽出した者は、すべて貸地及び貸家を有する者である。

イ 右認定の類似同業者の抽出方法に特に不合理な点はなく、右抽出方法は合理的なものであるということができる。

(4) 右(2)及び(3)で判示したところからすると、右(1)の契約に基づいてスギウラ興産に対して支払われるべき適正な管理料の額の賃料の額に対する割合は、右(3)認定の類似同業者の管理料の額の賃料の額に対する割合の平均値を上回ることはないものと認められる。

(5) 弁論の全趣旨によると、スギウラ興産は、法人税法第二条一〇号に規定する同族会社に当たるものと認められるところ、右(1)認定の管理料の額は、右(4)認定の適正な管理料の額を大きく上回るものであり、スギウラ興産の社員である原告博幸の所得税の負担を不当に減少させるものであるから、所得税法一五七条一項により、適正な管理料の範囲内についてのみ必要経費と認めることが相当である。

(6) したがって、必要経費と認められる管理料の額は、別表(四)に記載された金額を上回ることはないから、原告博幸が右1の賃料収入を取得するのに要した管理料の額は、次の金額を上回ることはない。

昭和六三年 一〇九万八一三〇円

平成元年 九六万八六二七円

平成二年 一〇九万三一二九円

(二) 管理料以外の必要経費

証拠(第三五号事件の乙二)と弁論の全趣旨によると、原告博幸が右1の賃料収入を取得するのに要した管理料以外の必要経費の額は、前記第二の二1(一)(2)イのとおりであったものと認められる。

(三) 必要経費の合計額

必要経費の合計額は、次のとおりとなる。

昭和六三年 六五四万〇七七五円

平成元年 六七六万九九五〇円

平成二年 六五九万七一九二円

3  原告博幸の総所得金額及び税額

(一) 昭和六三年分

(1) 不動産所得の金額

右1の賃料収入から右2の必要経費を差し引いた二四六四万二五三一円となる。

(2) 給与所得の金額

原告博幸が安城市農業協同組合から受領した給与収入金額が三三六万四六一五円であり、スギウラ興産から受領した役員報酬額が六〇〇万円であること及び給与所得控除額が二〇三万一四六二円であること(前記第二の二1(一)(3)ア<2>の事実)は、原告博幸が明らかに争わないので、これを自白したものとみなす。

そうすると、給与所得の金額は七三三万三一五三円となる。

(3) 総所得金額

右(1)の金額と右(2)の金額の合計額三一九七万五六八四円となる。

(4) 前記第二の二1(一)(3)ア<4>の所得控除の額(一二四万二一八〇円)及び同<7>の源泉徴収税額(二一〇万〇八〇〇円)は、原告博幸が明らかに争わないので、これを自白したものとみなす。

(5) 右(3)の総所得金額から右(4)の所得控除の額を差し引いて千円未満の端数を切り捨てると、課税される所得金額は三〇七三万三〇〇〇円となり、税額は一一四六万六五〇〇円となる。これから右(4)の源泉徴収税額を差し引くと、納付すべき税額は九三六万五七〇〇円となる。

(二) 平成元年分

(1) 不動産所得の金額

右1の賃料収入から右2の必要経費を差し引いた二四七二万九二一五円となる。

(2) 給与所得の金額

原告博幸が安城市農業協同組合から受領した給与収入金額が三八六万一〇五二円であり、スギウラ興産から受領した役員報酬額は七八〇万円であり、昌子から受領した青色申告専従者給与の額が六〇万円であること及び給与所得控除額が二二〇万八〇五三円であること(前記第二の二1(一)(3)イ<2>の事実)は、原告博幸が明らかに争わないので、これを自白したものとみなす。

そうすると、給与所得の金額は一〇〇五万二九九九円となる。

(3) 総所得金額

右(1)の金額と右(2)の金額の合計額三四七八万二二一四円となる。

(4) 前記第二の二1(一)(3)ア<4>の所得控除の額(一二六万七三七一円)及び同<7>の源泉徴収税額(二九六万四五〇〇円)は、原告博幸が明らかに争わないので、これを自白したものとみなす。

(5) 右(3)の総所得金額から右(4)の所得控除の額を差し引いて千円未満の端数を切り捨てると、課税される所得金額は三三五一万四〇〇〇円となり、税額は一二八五万七〇〇〇円となる。これから右(4)の源泉徴収税額を差し引くと、納付すべき税額は九八九万二五〇〇円となる。

(三) 平成二年分

(1) 不動産所得の金額

右1の賃料収入から右2の必要経費を差し引いた二五一八万六九七二円となる。

(2) 給与所得の金額

原告博幸が安城市農業協同組合から受領した給与収入金額が四二三万二四九二円であり、スギウラ興産から受領した役員報酬額が六七二万円であり、昌子から受領した青色申告専従者給与の額が六〇万円であること及び給与所得控除額が二一七万二六二五円であること(前記第二の二1(一)(3)ウ<2>の事実)は、原告博幸が明らかに争わないので、これを自白したものとみなす。

そうすると、給与所得の金額は九三七万九八六七円となる。

(3) 総所得金額

右(1)の金額と右(2)の金額の合計額三四五六万六八三九円となる。

(4) 前記第二の二1(一)(3)ウ<4>の所得控除の額(一三三万〇〇四八円)及び同<7>の源泉徴収税額(二四八万〇四〇〇円)は、原告博幸が明らかに争わないので、これを自白したものとみなす。

(5) 右(3)の総所得金額から右(4)の所得控除の額を差し引いて千円未満の端数を切り捨てると、課税される所得金額は三三二三万六〇〇〇円となり、税額は一二七一万八〇〇〇円となる。これから右(4)の源泉徴収税額を差し引くと、納付すべき税額は一〇二三万七六〇〇円となる。

(四) 右(一)ないし(三)の総所得金額及び納付すべき税額は、いずれも第二の一1ないし3の各処分における総所得金額及び納付すべき税額を上回るから、これらの各処分は適法である。

二  原告健璽について

1  賃料収入について

(一) 桜町の土地に係る賃料収入

右一(1)(二)のとおり、原告健璽は、桜町の土地の共有者として、この土地を杉浦製粉に賃貸して、賃料収入を得ていたものと認められるところ、その額は、右一1(二)(2)の事実に弁論の全趣旨を総合すると、昭和六三年につき、六三万〇七五一円、平成元年につき、三一万五一三八円を上回る金額であると認められる。

(二) 別紙物件目録記載(三)(3)の建物に係る賃料収入

右一1(三)のとおり、原告健璽は、別紙物件目録記載(三)(3)の建物の共有者として、右建物を賃貸して、賃料収入を得ていたものと認められるところ、その額は、右一1(三)(2)の事実に弁論の全趣旨を総合すると、別表(二)記載のとおりであると認められ、その合計額は、次のとおりとなる。

昭和六三年 一七万四九九九円

平成元年 一五万八三三三円

平成二年 二一万三三三二円

(三) 原告健璽の賃料収入の額は、右(一)及び(二)の金額を合計した次の金額となる。

昭和六三年 八〇万五七五〇円

平成元年 四七万三四七一円

平成二年 二一万三三三二円

2  右1の賃料収入を得るのに要した必要経費

(一) 管理料

(1) 右一1(二)のとおり、昌子、原告博幸及び原告健璽とスギウラ興産との間には、昌子、原告博幸及び原告健璽は、桜町の土地の賃料の管理運用をスギウラ興産に委託し、スギウラ興産に対して同額の委託料を支払う旨の契約が存するが、右一2(一)のとおり、スギウラ興産は、法人税法二条一〇号に規定する同族会社に当たるところ、右契約における管理料の額は、適正な管理料の額を大きく上回るものであり、スギウラ興産の社員である原告健璽の所得税の負担を不当に減少させるものであるから、所得税法一五七条一項により、右一2(一)(4)認定の適正な管理料の範囲内についてのみ必要経費と認めることが相当である。

(2) したがって、必要経費と認められる管理料の額は、別表(四)に記載された金額を上回ることはないから、原告健璽が右1の賃料収入を取得するのに要したものと認められる管理料の額は、次の金額を上回ることはない。

昭和六三年 二万七八一七円

平成元年 一万二二五九円

(二) 管理料以外の必要経費

証拠(第三六号事件の乙七)と弁論の全趣旨によると、原告健璽が右1の賃料収入を取得するのに要した管理料以外の必要経費の額は、前記第二の二1(二)(2)イのとおりであると認められる。

(三) 必要経費の合計額

必要経費の合計額は次のとおりとなる。

昭和六三年 一八万四三〇三円

平成元年 一三万六〇五〇円

平成二年 六万三五四〇円

3  総所得金額及び税額

(一) 昭和六三年分

(1) 不動産所得の金額

右1の賃料収入から右2の必要経費を差し引いた六二万一四四七円となる。

(2) 給与所得の金額

原告健璽が合資会社安城建築から受領した給与収入金額が一〇七万〇二〇二円であり、株式会社ミカワクリエートから受領した給与収入金額が七三万二〇〇〇円であり、スギウラ興産から受領した役員報酬額が二八八万円であり、昌子から受領した青色申告専従者給与の額が六〇万円であること及び給与所得控除額が一五五万三二〇〇円であること(前記第二の二1(二)(3)ア<2>の事実)は、原告健璽が明らかに争わないので、これを自白したものとみなす。

そうすると、給与所得の金額は三七二万九〇〇〇円となる。

(3) 総所得金額

右(1)の金額と右(2)の金額の合計額四三五万〇四四七円となる。

(4) 前記第二の二1(二)(3)ア<4>の所得控除の額(一一二万五五九二円)及び同<7>の源泉徴収税額(五七万六三一〇円)は、原告健璽が明らかに争わないので、これを自白したものとみなす。

(5) 右(3)の総所得金額から右(4)の所得控除の額を差し引いて千円未満の端数を切り捨てると、課税される所得金額は、三二二万四〇〇〇円となり、税額は、三四万四八〇〇円となる。これから右(4)の源泉徴収額を差し引くと、還付金の額に相当する税額は二三万一五一〇円となる。

(二) 平成元年分

(1) 不動産所得の金額

右1の賃料収入から右2の必要経費を差し引いた三三万七四二一円となる。

(2) 給与所得の金額

原告健璽が株式会社ミカワクリエートから受領した給与収入金額が二一九万八〇〇〇円であり、スギウラ興産から受領した役員報酬額が三八四万円であり、昌子から受領した青色申告専従者給与の額が八四万円であること及び給与所得控除額が一七八万二八〇〇円であること(前記第二の二1(二)(3)イ<2>の事実)は、原告健璽が明らかに争わないので、これを自白したものとみなす。

そうすると、給与所得の金額は五〇九万五二〇〇円となる。

(3) 総所得金額

右(1)の金額と右(2)の金額の合計額五四三万二六二一円となる。

(4) 前記第二の二1(二)(3)イ<4>の所得控除の額(一一六万五〇三八円)及び同<7>の源泉徴収税額(九一万四四七〇円)は、原告健璽が明らかに争わないので、これを自白したものとみなす。

(5) 右(3)の総所得金額から右(4)の所得控除の額を差し引いて千円未満の端数を切り捨てると、課税される所得金額は、四二六万七〇〇〇円となり、税額は、五五万三四〇〇円となる。これから右(4)の源泉徴収額を差し引くと、還付金の額に相当する税額は三六万一〇七〇円となる。

(三) 平成二年分

(1) 不動産所得の金額

右1の資料収入から右2の必要経費を差し引いた一四万九七九二円となる。

(2) 給与所得の金額

原告健璽が株式会社ミカワクリエートから受領した給与収入金額が二八一万八〇〇〇円であり、スギウラ興産から受領した役員報酬額が三二四万円であり、昌子から受領した青色申告専従者給与の額が八四万円であること及び給与所得控除額が一七八万四二八〇円であること(前記第二の二1(二)(3)ウ<2>の事実)は、原告健璽が明らかに争わないので、これを自白したものとみなす。

そうすると、給与所得の金額は五一〇万八五二〇円となる。

(3) 総所得金額

右(1)の金額と右(2)の金額の合計額五二五万八三一二円となる。

(4) 前記第二の二1(二)(3)ウ<4>の所得控除の額(一二三万五四三一円)及び同<7>の源泉徴収税額(六七万四七〇〇円)は、原告健璽が明らかに争わないので、これを自白したものとみなす。

(5) 右(3)の総所得金額から右(4)の所得控除の額を差し引いて千円未満の端数を切り捨てると、課税される所得金額は四〇二万二〇〇〇円となり、税額は五〇万四四〇〇円となる。これから右(4)の源泉徴収額を差し引くと、還付金の額に相当する税額は一七万〇三〇〇円となる。

(四) 右(一)ないし(三)の総所得金額は、いずれも第二の一5ないし7の各処分におる総所得金額(異議決定によて一部取り消されるものについては、取消後の金額)を上回り、その結果、右(一)ないし(三)の還付金の額に相当する税額は、いずれも第二の一5ないし7の各処分における還付金の額に相当する税額(異議決定によって一部取り消されるものについては、取消後の金額)を下回るから、これらの各処分は適法である。

三  なお、原告らは、原告らの総所得金額の算定に当たってスギウラ興産からの役員報酬を含めながら下菅池の土地及び桜町の土地の賃料が原告らに帰属するとしてその賃料収入に課税することは許されない旨の主張をする。

しかしながら、すでに認定したとおり、下菅池の土地及び桜町の土地の賃料並びにスギウラ興産からの役員報酬が原告らに対して支払われたものと認められるのであり、しかも、それらは別個の所得であるから、総所得金額の算定に当たって右賃料収入と右役員報酬をともに所得に含めて計算することが許されないとすべき理由はないものというべきである。原告らは、原告らに支払われた役員報酬は実質的に賃料であると主張するが、その金額は、賃料収入の額と一致しない(原告博幸の役員報酬の額は、賃料収入の額よりもはるかに多いし、原告健璽の役員報酬の額は、賃料収入の額よりも少ない)上、各年分の役員報酬の原資が各年分の賃料であると認めるに足りる証拠もないから、原告らに支払われた役員報酬が実質的に賃料であると認めることはできない。

また、右一1(一)及び(二)で認定したとおり、原告博幸とスギウラ興産との間には、原告博幸は、下菅池の土地の賃料の管理運用をスギウラ興産に委任し、スギウラ興産に対して、同額の委任料を支払う旨の契約が、昌子、原告博幸及び原告健璽とスギウラ興産との間には、昌子、原告博幸及び原告健璽は、スギウラ興産に対して、桜町の土地の賃料の管理運用を委任し、同額の委任料を支払う旨の契約が、それぞれ締結されていたのであるから、下菅池の土地の賃料収入が原告博幸に、桜町の土地の賃料収入が昌子、原告博幸及び原告健璽にそれぞれ帰属するとしても、スギウラ興産は、右委任料の支払を受けることによって、原告らに対する役員報酬を支払うことができるものと認められる。もっとも、右一及び二の各2で述べたとおり、右管理料の支払は、所得税法一五七条により全額が必要経費と認められるものではないが、それは、必要経費の計算上そのように扱われるにすぎないから、右管理料の支払が所得税法一五七条により全額が必要経費と認められないことを理由に、総所得金額の算定に当たって右役員報酬を右賃料収入とともに所得に含めて計算することが許されないものとすることはできない。

したがって、総所得金額の算定に当たって右役員報酬を右賃料収入とともに所得に含めて計算することは、違法ではなく、憲法三〇条に違反するものでもない。

第五総括

よって、本件請求はいずれも理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法八九条、九三条一項本文を適用して、本文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岡久幸治 裁判官 森義之 裁判官 鈴木和典)

別紙

類似同業者抽出基準

(一) 貴署管内に貸地又は貸家を有し、不動産貸付業を営む個人のうち、所得税法一四三条(青色申告)の承認を受けて、昭和六三年分ないし平成二年分の所得税の確定申告について、青色申告書を貴職に対して提出している個人

ただし、次のイないしハに該当する個人を除く。

イ 上記期間の中途において、開業、廃業又は業種目等の変更をした個人

ロ 更正処分又は決定処分を受けた個人のうち、国税通則法又は行政事件訴訟法の規定による不服申立期間又は出訴期間を経過していない個人並びに不服申立中又は訴訟中の個人

ハ 報告書の作成日現在において、所得税の調査が行われている個人

(二) 貸地・貸家を有し、不動産貸付業を営む個人のうち、その貸地・貸家の管理を同族関係(法人税法二条一〇号に規定する同族会社)にない不動産管理会社に委任している個人

(三) 締結する管理委任契約の事業内容が主として賃貸契約の締結、更新、賃貸料の集金等である個人

(四) 各年分の支払管理料の対象となる賃貸物件に係る賃貸料収入が、次の範囲内である個人

イ 昭和六三年分の賃貸料収入が、一三〇八万一二〇五円以上五二三二万四八二〇円以下

ロ 平成元年分の賃貸料収入が、一三〇八万〇四九二円以上五二三二万一九六八円以下

ハ 平成二年分の賃貸料収入が、一三〇八万〇四九二円以上五二三二万一九六八円以下

物件目録

(一) 下菅池の土地

<省略>

(二) 桜町の土地

<省略>

(三) 貸家等

(1) 土地

<省略>

(2) 単独所有建物

<省略>

(3) 共有建物

<省略>

別表(一)

不動産所得の収入金額(原告 杉浦博幸)

<省略>

別表(二)

不動産所得の収入金額 原告(杉浦健辭)

昭和63年分

<省略>

平成元年分

<省略>

平成2年分

<省略>

別表(三)の(1)

類似同業者比率表(昭和63年分)

<省略>

別表(三)の(2)

類似同業者比率表(平成元年分)

<省略>

別表(三)の(3)

類似同業者比率表(平成2年分)

<省略>

別表(四)

管理料の計算表

(昭和63年分)

<省略>

(平成元年分)

<省略>

(平成2年分)

<省略>

*持分に応じた管理料の算定については、円未満切り上げて計算した。

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